日本将棋連盟が月刊棋譜社に申し入れ
寺尾さんからコメントで教えていただいたのですが、2005年9月15日付の赤旗の「棋界メモ」に「将棋連盟が月刊棋譜に『無断転載やめよ』」という見出しの記事が出ていました。
日本将棋連盟は9日、月刊棋譜社(奈良県安堵町)にたいし、同社発行「月刊棋譜」誌は「新聞観戦記や詰将棋を無断転用し、著作権を侵害している」と是正を申し入れる文書を送った。
申し入れ書は観戦記や詰将棋の無断転用は著作権の侵害であり、観戦記を一部加工したり詰将棋の作者名を削除していることは著作者人格権の侵害だと指摘している。
そのうえで同社に活動を停止するか活動継続の場合は主催社や関係者の承認を得るように求め、10月15日までに対応の回答がなければ法的処置を考えるとしている。
「月刊棋譜」という媒体は、将棋界の中でもマイナーです。近代将棋に広告が出ていたり、日本アマチュア将棋連盟で購読の斡旋が行われていたりしたので、名前だけ知っているという方は多いかもしれません。
申し入れの全文を見ないと判断できない部分も多いですし、そもそも私は月刊棋譜の現物を見たことがないので確実なことは何も言えないというのが正直なところです。もし観戦記をそのまま転載していた部分があったのなら、著作権侵害と指摘されても仕方ないだろうとは思いますが。
ただ、8月8日に「月刊棋譜」が終了で紹介したとおり月刊棋譜社は健康上の理由によりすでに活動を停止したという話なので、今さらそんな申し入れをしても無意味なのではないかという気がします。(あるいは、終了という話は実は誤りで実際にはまだ発行が続いているのでしょうか。もしそうなら訂正します。)
この申し入れに関して一つ注目されるのが、詰将棋が著作物であると断言している点でしょうか。これまでの詰将棋の著作物性について肯定的な議論はいくつかあり、私もどちらかといえばそれに賛同する立場ですが、詰将棋の著作権をたてに他人の行動を規制しようとした例は初めて見ました。
気になるのは、この申し入れを日本将棋連盟が行っているという点です。観戦記にしても詰将棋にしても(詰将棋が著作物だとして)、著作者は日本将棋連盟ではありません。プロ棋士が書いたものであれば、その棋士が日本将棋連盟に著作権を譲渡している可能性はゼロではありませんが、そういう話は聞いたことがありません。著作権者でない者が申し入れを行うことはどうなのでしょうか。もっとも、法的な根拠がなくても「是正を申し入れる」ことは可能ですから、そういう意味では問題ないのかもしれません。
新聞観戦記のほとんどは、掲載された後は誰にも顧みられることなく流れ去っていきます。著作権侵害であったとしても、そのような観戦記を後世の人が参照しやすい形で残した功績は認められて良いだろうと思います。これからの時代、その役割を誰が果たしていくのか。今回の申し入れがそのような大局的な見地に立って行われたものであることを願います。