名人戦契約問題についていろいろ(49)

9月2日に発売された将棋世界10月号でこの問題に関する文章がいくつか掲載されました。カラー2ページを使って「毎日単独案は否決 朝日単独か共催へ」という見出しの記事があった後、米長邦雄永世棋聖の「名人戦問題について」が2ページ、吉村達也氏の「新聞で伝えられなかった名人戦問題の一側面」が4ページと続きます。

それから、先崎学八段の「千駄ヶ谷市場」の中では次のような記述があります。

この問題が出てからはや四カ月、これほど棋士たちの精神が乱れた日々は未だかつてなかった。誰に訊いても酒の量が増えたという。誰かが飲み屋で荒れたり、泣き出したという話もよく聞いた。

問題が表面化してから四カ月、よくもこれだけ盤外でゆれたものだ。盤外だけではない。盤上にも、騒動の影響はあった。はっきりいって、ここ四カ月、全体の将棋の内容は、あまりいいものではなかった。終盤の粘り合い、互いの執念を感じさせるような熱局はすくなかった。

森内俊之名人もインタビューの中で「自分としてはまだ気持ちの整理ができていない」「いまは来年のことまで考えられない」と話しているのを見ても、そのような影響はあるのだろうと思います。(インタビューの収録はおそらく8月1日の臨時総会後間もない頃だと思われますので、1カ月以上経過した現在は違うかもしれません)

外野では名人戦がどうなろうと問題ないというような冷めた目もあったでしょうけども、内部から見ると極端に言えば組織の存亡がかかった問題ということで、行く末が気になるのは当然のことでしょう。一応の決着がついたとしても、根底にあるものが変わらない限り原因はなくなりませんから、できるだけの努力をしながら心の中で折り合いを付けていくということになるのだろうと思います。