将棋対局のインターネット速報はいつからか
先週発売の週刊将棋2月7日号で将棋の「ネット中継はいつ始まったのか」について情報を求める記事が出ています。はじめはあまり関心がなかったのですが、ふと調べてみると意外にいろいろあったのだなと面白くなってきました。
第37期王位戦(1996年7・8月)
まだきちんと調べたわけではないのですが、結論を先に書いてしまうと、現時点で最も古いと思われるインターネット速報は1996年7・8月に行われた第37期王位戦七番勝負羽生-深浦戦となっています。
第4局では西日本新聞社のページ、第5局では徳島新聞社のページにて、リコー将棋部の協力の下で中継が行われたそうです。当時URLは以下のようなものだったと思われます。
- http://www.coara.or.jp/~ns-event/oui/kifu/kifu.html(第4局、1996年8月19・20日)
- http://www.topics.or.jp/Oui/kifu/kifu.html(第5局、1996年8月26・27日)
これは、shogi.netのメーリングリストの過去ログから推測しました。
- http://www.shogi.net/shogi-l/Archive/1996/Naug18-00.txt
- http://www.shogi.net/shogi-l/Archive/1996/Naug18-01.txt
- http://www.shogi.net/shogi-l/Archive/1996/Naug18-02.txt
- http://www.shogi.net/shogi-l/Archive/1996/Naug27-01.txt
これは私は全く知りませんでしたが、archive.orgを探したりしなくてもわかる話ですのでご存じの方も多いのだろうと思います。少なくとも関係者の方がいらっしゃるはずですので、週刊将棋の方には既に連絡が行っているかもしれませんね。
このあたり、当時の苦労が伝わってきます。
今回の焦点は、如何に素早く最新の盤面を更新できるかである。そこで以下のような3ステップで最新の盤面へ更新するようにした。。
- 山下さんが対局場にパソコンを持参、対局場で指し手を入力し、それを電話回線を利用して電子メールで小川宛に送信。
- 小川は受信した電子メールに従い、最新の盤面・棋譜解説のページを作成。
- 作成したページ(HTMLファイル)を、ファイル転送プログラムにて、西日本新聞のWWWサーバーへ転送。
実際更新に要した時間は、例えば、5手分程度の更新では、関連ファイル作成(5分)、ファイル転送(3分)、都合8分程度を要した。総じて、1時間に10分程度の仕事が、当方に発生した。
1時間ごとに盤面画像と棋譜を更新する方式で、現在のJavaAppletを利用したやり方よりも手間がかかっていたことがわかります。
なお、
未確定なこと
ただし、これが最古のインターネット速報である確証はありません。
上で紹介したページに「インターネット上で、タイトル戦七番勝負を観戦できるというのは画期的なこと
」とあるので、ほとんどなかったであろうことはわかりますが、初めてだったのかどうかは定かではありません。
まず、気になるのが、将棋・第37期王位戦、羽生王位×深浦五段/特集の中の日程欄や、第2局として http://www.hokkaido-np.co.jp/oisen/sokuho.html にリンクが張ってあることです(リコー将棋部の第37期王位戦にもそのような記述があります)。つまり、1996年7月23・24日に行われた第2局でも北海道新聞で速報が行われた可能性があるのですが、それを裏付ける記述は今のところ見つかっていません。
こういうことを調べていくと、これが最古のようだと思いながら見ているとまた新しいものが見つかるという具合になかなか面白いのですが、それがどこまで続くのかわからないために自信が持てない現状があります。
- 他のタイトル戦はどうなのか(一部については後述)
- タイトル戦以外のプロ公式戦はどうか(順位戦や挑戦者決定戦など)
- アマ棋戦やコンピュータ対局で中継が行われたことはないのか
1996年という時期はほとんどの新聞社が自前のウェブサイトを持っていたものの、将棋関係では日本将棋連盟公式サイトさえなかった時代です。現在参照できる情報はほとんどなく、それでもいくつかの情報を頼りにたどっていくといろいろ楽しめます。
週刊将棋にはもう少し進んで、将棋サイトの黎明期の様子を再現してほしいですね。そもそも将棋関係で最初の「ホームページ」はどこまでさかのぼれるかとか。
こうして見ていくと、10年間の記録を残しているページがいかに貴重かということが身にしみてわかります。この10年でファイルを保存しておくことの費用がほとんどゼロに近くなったことから、これからの10年間は多くの情報を残すことが容易になりました。うっかり消えてしまうことはありますが、自ら進んで消すようなことはできるだけなくしたいものです。
第22期棋王戦第1局(1997年2月8日)
将棋のリンク集の中でも、昔からきちんと更新されているのが高田淳一氏の将棋リンク集です。ここにタイトル戦中継ページへのリンクが並んでおり、中でも最古なのが1997年2月8日に行われた第22期棋王戦第1局羽生-森下戦の速報ページです。現在のところ、これが(タイトル戦シリーズごとに数えて)2番目に古い速報です。
熊本日々新聞によるこのページは、Shockwaveを用いた動く将棋盤が利用されていました。ただし、更新は30分ごとだったようです。
なお、リコー将棋部の第22期棋王戦を見ると、このシリーズでは第1局以外では速報は行われなかったように見えます。しかし、初めてにしては形式が整っているような気もするので、その前年、もしくは挑戦者決定戦あたりで中継が行われていた可能性は否定できません。(少なくとも、これが棋王戦で初めての速報ページであるという記述は見つかりませんでした。)
第55期名人戦(1997年4〜6月)
なお、1997年度になると、王位戦・棋王戦・女流王位戦で本格的に全局でインターネット速報が開始されます。それでは、他の棋戦はどうかというとなかなか実態がわからないのですが、名人戦に関しては1997年度が最初のようだということがわかってきました。
更新間隔は不明ですが、間が空いてしまうことを利用して、次の一手当てクイズを1日に何度もやっていたようです。
リコー将棋部の第55期名人戦第2局……「三者三様の変身への意思と気迫」の中に「毎日新聞社は今期から名人戦をインターネットで速報を出し始めた
」とあることから、名人戦速報はこれが最初の試みだったようです。
これ以上はあまり調べていません。特に、竜王戦中継がいつから始まったのかよくわかっていません。竜王戦倶楽部ができたのは2001年だったような気がしますが、それ以前から速報があったかどうか。