新朝日アマ名人の吉田正和氏

3月21日の朝日アマ名人戦で吉田正和氏が優勝でお伝えしたとおり、朝日アマチュア将棋名人戦で優勝した吉田正和氏は、天野高志氏との三番勝負に勝利して5月15日に新朝日アマ名人となりました。

このときの対局後のコメントが奮っていたため、話題を呼んでいます。6つほどリンクしておきますが、ざっと見ただけでもさらに10名以上の方が言及していました。

新聞に掲載されたコメントが以下のようなもの。

〈吉田さんの話〉3局とも手が見えなくて苦しい戦いでした。タイトルを取ったことに興味はないが、これで自分の評価が上がるのはうれしい。

これを読んだとき、私は「大胆だが、これがきちんと掲載されたということは、朝日新聞の人も理解した上でのことなのだろう」と思っていました。実際、朝日新聞5月16日付朝刊2面のコラム「ひと」は無難な仕上がりになっています。

「1局目から2連勝できなかったのは残念。でも負けて得られるものもありました。」

名人の天野高志さん(37)に初戦負けから2連勝で逆転勝ち。歴代最年少での栄冠と胸を張れるのに、笑顔は見せず、不満を口にする。

このような書き方を見ると、勝ってなおおごらずといったストイックな姿を想起します。おそらく、本人もそのような心境なのでしょう。しかし、将棋雑記帳の記述を見ると、それもやや度が超えているかなという印象を受けます。

終局後、朝日新聞から「これで歴代朝日アマ名人に名を刻むことになりましたね」というインタビューに対し、新名人のコメント「棒銀ばかりでうんざりしました。朝日のタイトルには興味ありません。それより、アマ竜王戦の地区予選で負けたほうがよっぽど悔しいです。」朝日「。。。。。。」朝日新聞にはこのコメントがどのような形で掲載されるのだろうか。

近代将棋6月号96頁の朝日アマ決勝戦の吉田氏による自戦記には、次のような記述があります。

優勝してもまだタイトルでないということもありますが、県代表のほうがうれしく思いました。全国大会が自分の地位を守るための下向きの戦いになっていることを改めて確認させられました。早く実力に地位が追いついてほしいと思いました。

私は一瞬「実力が地位に」の誤りかと思ったのですが、これで正しいんですね。三番勝負前の時点では、タイトルを取ればうれしいかもというニュアンスが感じられます。

吉田氏はプロを目指しているので、奨励会に入ると朝日アマ名人の地位は関係なくなりますし、またこのように自信家である必要もあるのでしょう。ただ、このままだとヒールとしてやっていくことになりそうです。すでに多くの方が書いていますし、特に何も言うことはありません。朝日アマチュア名人戦@将棋パイナップルには、多数の方の書き込みがあり、デリケートな話題も出ています。

6月2日4日*1には、朝日将棋オープン選手権予選1回戦で阪口悟四段との対局が控えています。このあと、どのようなコメントが出てくるのか注目ですね。

28日追記:

28日に放送された囲碁将棋ジャーナルで吉田氏のインタビューが少しだけ流れました。「タイトルに興味はない」という言葉が出ています。

うつむきながら早口でしゃべる様子からは、コメントが苦手という印象を持ちました。あまり適切でない言葉があったとしても、その分を割り引いて良い方に汲み取るようにした方がいいのかもしれません。プロを目指すために自分の考える最善の努力をしている。そのためにある程度自己暗示もかける必要がある。その結果ああいうコメントになったのかな、と。

しゃべり方の訓練はいつでもできると思います。将棋の実力と周囲のサポートがあれば、そういったことは後から付いてくると期待します。

*1:なぜか、日程を2日勘違いしていました。