テレビ対局の感想戦はどうにかならないか

NHK杯戦、銀河戦などのテレビ対局では、終局後に時間が余ると感想戦の様子が放送されます。しかし、片上大輔五段が指摘する次のような側面は見逃せません。

残念ながら現在は、放送時間の穴埋めに過ぎなくなっているように思う。これを解決すれば、もっと番組を楽しめるファンの人は増えるのではないだろうか。

プロ野球中継が9時前に終わってしまったときは、まず解説者のトークや、事前に準備された過去の映像の総集編のようなもので時間をつないでいます。感想戦を流すがその程度のものでしかないという意識に見えるのは確かです。プロ野球と違って将棋の場合は放送時間前に終わることが多いので、その時間をもっと有効に使えるようなアイディアの必要性はより高いと考えられます。

プロ棋士がよく理解できないことを話しているのを聞くのも面白いのですが、それも5分くらいで飽きてしまます。千葉涼子女流王将が聞き手を担当していた頃は、対局者が口頭のやりとりだけですまそうとしたときに、駒を動かすように頼むなどの機転がありましたが、中倉宏美女流初段はまだそこまではできていません。もっとも、そういった介入で感想戦がやりにくくなるのも、指し手の意味の解明という点では好ましくありませんし、片上五段の書くように対局直後の対局者はなかなかわかりやすさまで気を回せないということもあるだろうと思います。

この感想戦を編集したり解説者がその見解を伝え直したりすることにより、視聴者に対局の内容を伝わりやすくしたらどうか、というのが片上五段の提案です。これは私も非常に賛成です。

これを実現するための障害になりそうなのは、NHKの負担が増えることでしょうか。感想戦の収録内容をつぶさに見直して適切なコメントを抜き出して編集するとなると、作業量はかなり増えるのではないかと思います。個人的に気になるのは、NHKが将棋をどのように見ているのかという点です。情熱のある人は確実にいると思われますが、全体として少しでも費用の増加する提案は却下というような冷淡な態度になっていないのかどうかが不安に思われるわけです。そう考えると、見てますということを直接NHKに伝えていくのがいいという結論になりましょうか。何十年も進化がほとんどなかったとはいえ、やる気になってくれればNHKはやってくれると思いますので。

次に、chaturangaさんが解説者の選定について改善の余地があると書かれています。現状で、どのような基準で解説者が選ばれているのかよくわからないのですが、NHK杯の場合、1人の棋士は1年に1度しか解説者にならない原則があるように見えます。NHK杯囲碁では、石田芳夫九段や武宮正樹九段のように解説の得意な棋士が何度も担当することがあるので、このあたりは違いがあるようです。

どうしてこうなっているのかと考えると、解説者の仕事がある種の顔見せになっているということなのでしょうか。それだとあまり生産的でないので、見る側としてはどの棋士が解説がうまいのか、評価を定めていくことが重要なのでしょう。そのためにも、若手の起用は私も特に期待したいところです。早指しの解説はある意味で対局者よりも読みの瞬発力が求められるので、その点でも若手は有利だと思います。

そういうことと関連するかどうか不明ながら、2月18日更新の米長邦雄の家によると、例年日本将棋連盟会長が解説者を務めることが慣例になっていたNHK杯勝戦で、米長邦雄永世棋聖は「既に老境に入りつつあって」ということで辞退することにしたそうです。かわりに誰になるのかはまだ発表されていません。