森内俊之三冠は千日手規定改定へ本気

突然ですが問題です。

「将棋のタイトル戦で棋士AとBが対戦するとする。第1局は振り駒でAが先手番となった。しかしこの将棋は千日手となったため、Bを先手番として指し直され、この指し直し局で決着がついた。さて、この次に行われる第2局で先手番を持つのはどちらか。」

こういう場面が現れるのは珍しくありませんが、将棋界に明るい人でないと正しく答えられないと思います。

現時点での正解は「王座戦五番勝負ではB。それ以外の棋戦ではA。」です。ご存じでしたでしょうか。

今週は森内さんから電話をいただいたのが印象的。ポイントは千日手規定である。森内さんの一貫した主張は「即日指し直す場合は指し直し局を手番上一局と見ない」への変更で、タイトル戦に登場するたびに各社へ要望されている。個人的にはこの案への支持を表明しているし、実際既に王座戦で採用されている。

森内俊之三冠は例えば次のようなところで一貫した主張をしています。(他にもありましたら教えて下さい。)

週刊将棋2003年1月22日号

それよりも私はルール改正を提言したい。これは以前から言っていることですが、例えばタイトル戦でAとBが争ったとします。現行では1局目が千日手になった場合、最初に先手番だったAが再び2局目も先手を持つことになります。Bは持ち時間の少ない第1局の指し直し局で先手番を持っただけで再び2局目を後手番で戦わなければいけません。私は千日手にしたAに責任があるのだから、2局目はBが先手を持った方が自然だと思います。つまりは「1局完結方式」です。王座戦ではそれが実現していますが、ぜひ他の棋戦でも取り上げて頂きたいと思います。

将棋世界2004年9月号38ページ

千日手規定に関しては、王座戦で採用している「一局完結方式」で行うのが合理的かつ対局者も安心して対局に打ち込めると思うのだが、どうだろうか。機会があるたびにいろいろなところで話をしてはいるが、この場をお借りして改めて提案させていただきます。

私はこの提案を支持します。上の記述だけでは理解しにくいかもしれないので、もう少し解説を加えてみます。なお下のページも参考にして下さい。

第1局で千日手になり、その後引き分けがなく第7局まで進行した場合は、以下のような手番になります。

棋士1(千)
A
B

振り駒で決まる最終局を除き、Aは先手番が7局中4局、Bは先手番が7局中3局(うち1局は持時間の短い指し直し局)ということで、先手で千日手にしたのはAなのにもかかわらず、Aは全く損をしていないことがわかります。つまり従来方式の番勝負では、最初の振り駒で先手番を引き当てると「先手番で千日手に持ち込んでも損をしない権利」がついてくるわけです。これはあまり公平ではないと思います。

一方、王座戦の「一局完結方式」では次のような進行となります。

棋士1(千)
A
B

この場合、Aは先手番が7局中3局ということで、損していることがわかります。

このような細かい差異は、難しい場面に直面した対局者でないとなかなか気付かないところかもしれません。実際にタイトル戦を指す棋士が提言しているわけですから、他の棋戦でも取り入れられていくものと期待します。

10月14日に続きを書きました。