タイトル戦での先後勝率の差

将棋界で計測可能な数字はたくさんあります。その中で私が関心を持っているデータの一つが先手の勝率が何によって左右されるかです。例えば、2005年5月4日に先手の実質的勝率はどの程度かというデータを不完全な形で出したことがあります。

最近は、タイトル戦で先手が勝つ例が目立つという話が出ています。そこでこんなデータをまとめた方がいらっしゃいました。

ここ3期のタイトル戦では先手が64勝42敗(勝率 0.615)だそうです。昨年度の先手勝率はまだ発表されていませんが、その前の2年間の先手勝率は平均で5割3分か4分くらいだったと思うので、それと比べるとだいぶ高いような気もします。しかし、誤差と言えば誤差と言えそうでもあります。

タイトル戦の場合、普通の対局と比べて先後の勝率に差が出るかもしれない要因がいくつか考えられることに注意が必要です。

  • タイトル戦では振り駒がある場合(第1局・最終局)とない場合(それ以外)がある。振り駒がなく、事前に手番が決まっていると序盤作戦が立てやすくなり勝率に影響が出るかもしれない。
  • 千日手持将棋により指し直しになる場合、即日指し直しか日を改めるかで持ち時間が異なる。持ち時間が短い方が後手の勝率が上がると言われることがある。
  • 番勝負は途中で終わることがあるので、先手勝率によって分母となる対局数が変わり、平均を取る際に先手勝率が高い部分が重く見積もられる可能性がある。(例えば、五番勝負で先後が完全に五分なら8分の1の確率で3局で終了するが、先手が確実に勝つなら必ず第5局まで進む。)