女流棋士の待遇を考える

今度は中井広恵女流六段以外の女流棋士のコメントが掲載されました。清水市代女流三冠の「精神的にも、立場的にも、ご自身の意志が覆い尽くされてしまうような、複雑な状況になってしまっている感がありますが」とか、蛸島彰子女流五段の「中井さんが「何故女流なのか」「何故私なのか」とすっきり澄んだ気持で対局できないという心境になるのもよく理解できます」といったように、中井女流六段の立場に配慮したコメントが目立ちました。

今回の中井女流六段や他の女流棋士のコメントでも、女流棋士の立場・待遇を向上させたいという思いが見られました。しかし、第三者の目から見ると、現在の女流棋士の待遇がどの程度のものなのかほとんど公開されていないこともあって、どうすればよいのかはわかりにくいのが実情です。

どこで聞いた話だか忘れてしまったのですが、女流タイトルの四冠を独占してもやっと1000万円をこえるくらいだと聞いたことがあります(囲碁の女流タイトルの優勝賞金は500万円前後なので、違うのかもしれません)。そうだとすると、男性棋士のトップと比べて10分の1程度ですね。

男性棋士の年間獲得対局料の中間値はだいたい500万円から600万円くらいではないかと思います。女流棋士の中間はその10分の1程度なのでしょうか。だとすると、厳しいなあと感じます。

ゴルフやテニスでは、並の男性選手をはるかに上回る賞金を稼ぐ女性選手も珍しくありません。特にここ数年の日本のゴルフ界では、女性の方が男性よりも賞金額が大きくなるという現象が起きています。このように、女性の方が実力が劣るからといって、それがすぐに収入の小ささに結びつくとは言えません。将棋界でも、実力が同程度であれば女流棋士の将棋は男性棋士の将棋よりも多くの人に見られるのではないでしょうか。だとすれば、女流棋士の実力が劣るからというだけでこれほどの収入格差がつくことは誤りという結論になります。

ただ、清水女流三冠の言うように「『女流棋士』が、何らかの形で、必要最低限の保障を頂けること」は難しいだろうと思います。ゴルフでもテニスでも負け続ければ収入はなくなりますし、競技としてはそれが本来の姿でしょう。現在の女流棋士の世界では対局で生活が保障されるようになるためのハードルが高すぎるという点には同感ですが、ハードルをなくしてしまうのは良くないと思います。

とはいえ、「将棋ビジネス」考察ノート:覚悟!に書かれているとおり、実現は容易ではないでしょう。女流棋戦のスポンサーが対局料を増額することが最も直接的な解決策ですが、女流棋士にそこまでの魅力がないならば実現できません。それは将棋そのものの魅力が薄れているということをも意味するのかもしれませんね。

女流棋士と男性棋士の待遇面での格差は縮小していくべきだと考えます。しかし、悲観的に考えるならば、それは女流棋士の待遇改善ではなく、男性棋士の待遇悪化によってもたらされるのかもしれない。そんなことを考えました。